広島で翻訳茶

広島で働く、英語・日本語の翻訳者/翻訳茶=緒方亮のブログ

スカイ・クロラ、崖の上のポニョ、トニー滝谷、まとめてドン♪

だいぶ前になるけど、前者2本は劇場にて、後者はDVDで観ました。スカイ・クロラは「森博嗣の文章で読みたい」という思いがずっと頭にあった。原作シリーズははいまだ未読なのを断った上でちょっと書いてみようか。

経験上、森博嗣の作品は簡潔な文章で読んでいるのか自分が考えているのかわからなくなる部分があった。タバコの場面には煙の感触と思考があり、冷めた珈琲はあくまで冷めていた。映画はその辺があくまでスクリーン上の世界だった。音響など臨場感はあったのだけど入り込めなかった。まあ、映画は観るのであり頭で思い描くのが小説なのだから当たり前なのかもしれない。ただこの作品の世界について言えば、目の前で再現されるより、脳みそに再現させる小説の方があっているように思う。なんて、読んでもないのに書いていいのかな、書いちゃうけど。


ポニョはすべてをゆだねて存分に楽しめました。謎が多いというかいう評判が事前に頭に入っていたのですが、まあそんなものだよなと、考えずにすっと受け入れることができたのでそのまま考えないことにした。ポニョの母ちゃんは何者だおまえはとおもったけど。上下、主に上昇の動きが印象的で、たっぷりエネルギーもらえました。


トニー滝谷は、スカイ・クロラと同じく原作があって、こちらは村上春樹です。原作のトーンが見事に映画体験で再現されています。語り(地の文)があり、カメラ(視点)の水平移動による暗部を挟んだ途切れのない場面転換がありと、原作の空気感だけは損なわないようにあらゆる工夫がされていました。古き時代を思わせるジャズの音、時・場面を横断するカメラや音楽によって、時の経過と重なりを目の当たりに感じ取れます。


あまりに感心したのでいろいろ調べていたら、監督の市川準氏が今年なくなったとのこと。『たどんとちくわ』の人だったのか。